概要 | 「戦争資料のリアリティ──モノを媒介とした戦争体験の継承をめぐって」(分担執筆)
一般に戦争体験の継承は、口承、書物、映画、展示など、さまざまなメディアを通して行われ、そのメディアの選択は時代とともに変化している。戦争終結から時間が経過し、戦争の直接体験者が少数派に転じていくと、口述による継承が困難になると同時に、展示というメディアを通してモノによって戦争の記憶を後世に語り継ごうとする動きが活発化する。こうした現象について、ひめゆり平和祈念資料館や靖國神社遊就館の展示を事例に、リアリティの補完という観点から分析を加え、戦争体験を語り継ぐメディアとしての戦争展示の機能について検討した。その結果、戦争の直接体験者の減少に伴うリアリティの喪失(戦争体験の風化)を補填するかのように、戦争体験の継承を維持するための新たなリアリティが要請され、戦争展示における〈極限の具体性〉への志向やサイドストーリーの提示といった、臨場感あふれる展示手法が採用されるようになったことが明らかとなった。 |