言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 1994/08 |
形態種別 | 著書 |
標題 | 姿なき貴公子 -レ・ファニュの『アンクル・サイラス』について
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執筆形態 | 共著 |
掲載誌名 | 『英学・英語研究と人間教育』菅原俊也教授還暦記念論文集 |
巻・号・頁 | 139-150頁 |
概要 | A5判
Le FanuのUncle Silas は、四半世紀前に自ら発表した短編を改作したものである。筋書きや登場人物はだいたい似通っているが、前作と大きく異なる点は、スウェーデンボルグの神秘思想が導入されたこと、物語の舞台がアイルランドからイングランドになっている二点である。これは、1861年に『ダブリン・ユニバーシティ・マガジン』を850ポンドで買い取り、経営と編集の両方に携わったレ・ファニュが、売り上げ部数を気にしながら、ロンドンの出版元が要求する「英国を舞台とする現代物」に応じた結果といわれる。だが、その背景には、単に商業的な配慮というだけでは済まされない19世紀アイルランドの抱える問題が存在していたと思われる。1800年の併合法によって、アイルランドは議会を失った。連合王国の一員となった状況下、自治を求めてさまざまな形で闘争が繰り広げられ、支配階級の子孫として不穏な日々を送らねばならなかったレ・ファニュ。Uncle Silas においてなされた変更には、イギリスとアイルランドの狭間でおそらくどの時代よりも激しいジレンマに陥った19世紀アングロ・アイリッシュ作家達に共通した動揺、神秘や幻想を求めようとする傾向が認められる。 |
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