概要 | 近代博物館は、その出発の時点からすでに「政治性」を内包し、博物館の機能や役割も常にその時代の政治状況に規定されていた。こうした前提のもとで、1930年代から40年代にかけての日本の博物館の状況を事例に、植民地を含む日本の博物館が担っていた機能・役割や社会に対する影響について考察した。とりわけ皇国史観とナショナリズムを体現するものとして第二次世界大戦中に日本政府により計画され、戦争終結により幻に終わった国家レベルの二つの大規模な博物館(国史館、大東亜博物館)の建設計画に注目し、さまざまな主体がそれぞれの思惑のもとで関わりながら計画を推進してきたプロセスを検証した。さらに、これら二つの博物館に要請された性格を〈科学性〉と〈精神性〉という布置関係の中で位置づけ、博物館の歴史の中で忘れ去られたこれらの博物館計画が、戦後日本の博物館にどのようにかかわっていったのかを明らかにした。 |